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2015/07/22

ECO

エネパスコラム第16回

今年4月から、新築戸建て住宅も「長野県建築物環境エネルギー性能検討制度」の義務対象になった。
前回、この制度を活用して、住宅価格と燃費性能とのバランスを見ながら家づくりを進めることの大切さ、そして「長野県建築物環境エネルギー性能検討制度」の指定評価ツールの中で、年間の冷暖房に掛かる費用が算出できるツールの使用が望ましいことを説明した。
そこで、今回は、冷暖房の光熱費を算出できる評価ツールである“エネルギーパス”について説明したい。

エネルギーパスは、ドイツ生まれの住宅・建築物の省エネルギー性能の評価指標だ。
EUでは、2003年施行の「建築物のエネルギー性能に係る欧州指令(通称:EPBD)」により、全加盟国が家の「燃費性能」の算出や提示を義務付けている。具体的には、EPBDの第7条でエネルギー性能評価書について定めており、住宅・建築物の建設、売買、賃貸借などの取引時にエネルギー性能評価書の取得・提示を義務付けているのだ。

EPBDの制度内容に詳しい野村総合研究所の水石仁氏によると、この評価書は、国が認定した専門家により作成され、戸建住宅では大体5万円程度の評価費用を所有者が負担するのだという。しかしエネルギー性能評価書の提示義務付けにより、エネルギー性能のより高い建築物が評価され、資産価値が向上する傾向にある。そのため、エネルギー性能評価書をきっかけとして住宅のエネルギー性能の向上につなげられれば、所有者にとってメリットがあるのだという。

エネルギー性能評価書の制度は、EU加盟国ごとにそれぞれ定めることになっており、ドイツなどの国では、“エネルギーパス”が活用されている。このドイツのエネルギーパスを日本の気候や生活習慣に合わせた制度に改定して、我が国で普及促進を図っているのが、一般社団法人日本エネルギーパス協会だ。

このエネルギーパスは、「長野県建築物環境エネルギー性能検討制度」においても指定評価ツールのひとつになっている。

一般社団法人日本エネルギーパス協会理事の晝場貴之氏によると、エネルギーパスは他の主な指定評価ツールと比較すると、大雑把にいうと次の2点が優れているという。
①住宅の断熱・気密性能、つまり住宅の躯体性能自体をきちんと評価することができる。
②冷暖房に掛かる費用のシミュレーションを月単位で出すことができる。(図1参照)

特に、①に関しては、他の指標では設備も含めた総合的な評価のため、例えば太陽光パネルを設置すると躯体の断熱・気密性能が低くてもトータルの環境エネルギー性能が良くなってしまい躯体性能が分かりにくいことがある。他の指標を用いる際には注意が必要だ。
エネパス光熱費シミュレーション_第16回図1
つまりエネルギーパスは、住宅価格と燃費性能とのバランスを見ながら住まいの断熱・気密等の躯体の仕様を決めるためには、一般消費者にはとても分かりやすい評価ツールなのだ。

住宅事業者向けに、長野県の制度対応のための環境エネルギー性能評価指標取得講習会が2年間にわたって開催されたが、講習会主催者の長野県建築士会によると、エネルギーパスの受講者が最も多かったという。そのためエネルギーパスに対応している県内の工務店・ハウスメーカーもかなり多くなっている模様だ。家づくりの際にはぜひエネルギーパスの活用について、相談してみていただきたい。

さらに八十二銀行は、エネルギーパスの評価が一定ランク以上であることを、金利割引条件の一つとしている。ただしエネルギーパスの自己評価ではなく、図2のような第三者認証書取得が前提だ。詳しくは、八十二銀行にご相談してみてはいかがだろうか?
エネパス第3者認証書_第16回図2

次回は、断熱と併せて考えたい日射遮蔽と日射取得について、エネルギーパスの評価を用いた検討方法について説明したい。

長野県-北信・東信で自然エネルギー利用パッシブハウス、W断熱-Q1.0省エネ・低燃費住宅の新築、リフォーム     山本建設株式会社

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